ムカデの販売 ~通販で皆様に奇蟲が届くまで~

Terminal Legs は日本初のムカデ専門の通販店です。
ムカデの販売にあたっては様々なハードルがあったため、皆様にムカデが届くまでの過程をご紹介いたします。

1:現地でのムカデ探し
2:輸出許可取得
3:輸入での作業、通関、植物防疫
4:立ち上げ
5:発送
6:お客様のサポート

1:現地でのムカデ探し

まずはムカデを探すところから始まります。
ムカデの中で人気が高く、市場流通しているのはオオムカデ属が大半です。

実はオオムカデ属、世界に約100種しか記載されておりません。
しかし同種内の色彩変異に富むため、色とりどりのムカデが並ぶというわけです。
中には同種内で色彩がよく似ているものの、地域が異なるものも存在します。
混ぜずに原種の血統を維持していこうとなれば、実際に足を運び自分の目で確認していく必要があるのです。


例えばマレーシアンチェリーレッドの場合、ハイランド、ミッドランド、ローランドなどがありますが、どれも外見はかなり似通っています。

特にハイランドとローランドは生息地の標高に最大で2,000mの差があり、単純計算で好適温度が12℃も異なる計算です。同環境で飼育すると、片方が弱り死んでしまう事すらあります。

現地の業者は曖昧な情報を自信満々に回答することもあります。
こういった微妙な違いを見抜くには現地で観察することが効率的です。
また、実際の飼育や繁殖にも現地データは欠かせないものです。

他にも半水棲という触れ込みで国内流通したマレーシアンブラックテールですが、現地では木の雨露や落ち葉の上などで見つかることが多く、少なくともリュウジンオオムカデのようなレベルでの水への依存は無いものと思われます。
(今後の研究で、水中での狩りなどが明らかにされるかもしれませんが、少なくとも2023年までの私の観察では樹上や地表でしか見たことがありません。またアジア産オオムカデのほとんどは遊泳が得意なため泳がせただけでは半水棲種と断言することは出来ません。)

Scolopendra paradoxa をはじめ、半水棲オオムカデは高値取引されることが多く、売れさえすれば良いと考える方がいらっしゃることも事実です。
正確な情報を得るには現地観察が必須ともいえる状況かも知れません。

2:輸出許可取得

ムカデなど生きた動物は、ほとんどすべての国で輸出にあたり許可を必要とします。

正規輸出が可能な業者を探し出すことは難しいものです。

また輸出には膨大な事務処理と費用がかかります。そのため最低注文金額が決まっている業者がほとんどです。多くは日本円換算で50万円~100万円を一度で注文する必要があります。(最低金額ギリギリで頼むと仕事が遅く雑になったりすることも。資本主義ってやつですね。)

さらに航空輸送や温度管理ができる倉庫のレンタル費用で別途10万円前後の経費が掛かり、輸入時の税金も10%かかります。

こういった事情から学生、若年層を中心に密輸が絶えず、市場を席巻しているという問題があります。特にオークションやSNSを介した海外繁殖個体や野生個体の購入は推奨しません。
当方または実店舗様からムカデや奇蟲をご購入いただければ幸いです。

3:輸入での作業、通関、植物防疫

国内に入ってからもすぐに受け取りができるわけではありません。実際に空港まで行って通関する必要があるのです。

たとえば、関西国際空港の場合、国際貨物地区への立入事業者登録を行う必要があります。

初回は右も左もわからず、広大な貨物地区を彷徨ったり、専用周回バスの動きを把握しなくてはなりません。(写真はバイクだけど、車がないと本当に大変!)何年も通っていますが、航空会社が変わると受付先が異なるため、いまだに迷うことがあります。

分厚い辞書のような関税率表から自分の貨物の税率がどれなのか探します。
初回は本当に大変です(笑)
昨今は電子申請のため、まだスムーズに終わらせることが出来ますね。ありがたい時代です。

ムカデだけを輸入する場合は、通関して税金を納めるだけですので早ければ1時間程度の手続きと比較的スムーズですが、植物防疫法に関係する生物を輸入する場合は植物防疫所を通す必要があります。

またランダム検査にあたると、ラウンド運送といい、目の前に荷物があるのに受け取ることが出来ず、植物防疫所の職員様と検査して倉庫に戻し、税関職員さんと検査し倉庫に戻し、最後に税を納め倉庫に取りに行くという作業がまっています。こうなるとかなりの時間がかかりますね。

この写真の場合、ニジイロゴキブリやギガスオオアリなどが検査対象となった。


4:立ち上げ

輸入してすぐに販売するわけではありません。
輸入前の処置として、アンモニアによる自家中毒を防ぐ目的で水やエサをカットして送ることがあります。しっかりと水やエサを与えてから販売に至ります。

また寄生虫の処理を行う事もあります。まれにハリガネムシが入っていることもあります。国の検疫のみならず、自主的に検疫を行う事で、二次被害を防ぐことが重要だと考えています。


5:発送

発送は実際に皆様にお届けする非常に重要な部分です。

万が一の箱の破損による脱走防止と温度変化の抑制のため、生体は必ず二重梱包を行っています。
茶色の段ボールは安いのですが、太陽光による熱を吸収しやすいため、白い外装としています。

太陽光の影響を小さくするため外箱はロゴを線画として黒い面積を低減

また夏季や冬季は発泡スチロールを用いて輸送します。
同じ大きさの段ボールの10倍も高価ですが、生体を無事に届けるため積極的に用いています。

生体が揺れて弱ることを防ぐため、梱包材を詰める

さらに、事務所への集荷依頼を行わず、ヤマトのセンターに直接持ち込むことで、輸送時間を最大で8時間程、短縮しております。

仲介する人数が少なくなることで、誤配などの確率も大幅に下がり、生体もより安全にお届けできるのです。

特に夏や冬は1時間の差で状態が大きく変わるため重要です。
専業、通販専門店ならではの発送と言えます。


6:お客様のサポート

お客様はお届けしてからが飼育のスタート。
私どもとしても「こんなに大きく育ちました」「脱皮して綺麗になりました」というお声は嬉しいものです!

延長保証公式LINEX/Twitterによる飼育サポートも充実させています。