ムカデ幼体の飼育


店やイベントなどでは、時折ムカデの幼体が販売されています。
幼体は人の手によって繁殖させたCB (Captive Breed) 個体や、卵を持った状態で輸入され、それを孵化させたCH (Captive Hatched) 個体の場合が多いです。
野生個体では卵を持っているかもしれないというロマンと引き換えに、余命がわからないというリスクがありますが、幼体では生涯にわたって余すところなく飼育を楽しむことが可能です。
基本的には成体の飼育と何ら変わりがありませんが、幼体特有のノウハウもありますので以下にまとめました。


・ケージ
まずケージはプリンカップを用います。
直径が全長の2~3倍程度で浅いものがお勧めです。
あまり大きなケージで飼育するとどこにいるのか把握できず、エサ食いや生存確認が難しくなります。
次に針でフタに内側から外に向かって30か所程度の穴をあけ通気口を作りましょう。内側から開ける理由はバリが内側に向くとムカデを傷つける可能性があるためです。

・床材
幼体は細かいパウダー状のヤシガラやミズゴケを用います。

・オーナメント
オーナメントは入れない方が良いでしょう。
特に水入れでの溺死は悲しいものです。
給水のためには床材に霧吹きか洗浄瓶で水滴をつけましょう。
水をなめとるかわいらしい姿を拝むこともできます。
管理の面から植物も入れないほうがよいでしょう。

・保温/保冷
保温/保冷は少し難しい部分です。
パネルヒーターをセオリー通り底面の1/3程度敷くと狭いカップ内は、あっという間にオーバーヒートしてしまいます。
理想はエアコン一括管理です。この方法では内部の結露も発生しにくいため、水滴での貼りつき死を避けることもできます。
どうしてもエアコンが使えない場合は、大型のプラケースにプリンカップを入れ、プラケースの下にパネルヒーターを敷き、温室のようにする方法もあります。
この際、狙いの温度になっているか、初期に確認しておく必要があります。
冷やすことは難しいのでエアコンを利用してください。

・給餌
親離れ直後の個体には5mm程度のイエコオロギを用いることがお勧めです。 またミルワームやジャイアントミルワームをカットしたものも良い餌です。。 タイワンオオムカデなど極小のベビーの場合、フライトレスのトリニドショウジョウバエを与えることも検討してください。キイロショウジョウバエはオオムカデの幼体には少々小さすぎるようです。
死骸や食べ残しはカビの原因です。速やかに取り出します。
幼体の過食での死亡は私が知る限り発生しておりませんので、一気に育て上げてしまうのがよいかと思います。
1~2回脱皮すると想像以上に大きな獲物を狩ることが出来るようになりますが、念のためコオロギを与える際は頭を潰すようにします。
1年もたてば立派なサイズに育ってきます。
どんどん大きくさせていくのも飼育の楽しみの1つですから、飼育に慣れてきたら幼体から育てることもお勧めです。


ムカデはタランチュラなどと異なり、そのほとんどをWC (Wild Caught: 野生個体) の輸入に頼っています。
現地には人の手では取りつくせないほどのムカデが棲息していますが、それでも環境への負荷を考えるとCB個体の流通を進めたいと考えております。
その初期段階として詳細な産地情報を出すことと、CB、CH個体の販売をしております。
繁殖はたとえCHであっても一朝一夕に出来るものではなく、また一定以上の環境作りや、技術が必要となります。
「繁殖に成功」≒「ムカデが好む環境作りが出来た」と考えられますので、より信頼できる情報源が欲しいという方は応援いただけると幸いです。