タイの水没洞窟に美麗ダンゴムシを求めて

タイ北部の無数にある洞窟からネッタイコシビロダンゴムシを探し出す果てしない旅を行った。
洞窟は外界と隔てられており、1つ1つ異なる色形のダンゴムシが生息している。そのため、しらみつぶしに全ての洞窟に入る必要がある。

通常、ダンゴムシを探すなら、雨が多くジメジメとする雨季が適している。
しかしこの地域の洞窟は雨季に増水し水没するため、立ち入り出来なくなるものもある。
そのため、あえて条件の厳しい乾季に洞窟へと赴くのだ。
もっとも、入れると言っても船を用いることも多いのだが。

途方もない年月を経て作られた洞窟内部は、まさに自然の藝術である。

水没洞窟は基本的に資源の流入が少ない。
しかし、目を凝らすと様々な生物が浮かび上がってくる。

最大の資源供給者はコウモリだろう。
彼らのフンを糧にして、地面を蠢く者たちが生活している。

光を浴びない環境のためか純白のヤスデが現れた。

苦心の末に発見したネッタイコシビロダンゴムシ。Cubaris sp.

洞窟内は非常に狭く、機材の持ち込みに極めて強い制限がかかる。
カメラ、レンズ、ストロボは1つのみ。

安全のため洞内に引っかかる恐れのあるカバンなどの携行は認められなかった。
非常に狭く険しい地形である。

日本から移動だけで24時間以上。水が引くのを待ち、船で洞窟に入る。どう考えても狂っているが、狂ったその先に美しい世界が待っているとはなんともロマンチックではないか。

周辺には160以上の洞窟があり、当然すべての洞窟で生物が観察できるわけではない。
数十もの何もいない洞窟を後にして、ようやく見ることが叶った感動は忘れられない。

失敗するかも知れない探検に惜しみなく労力を投入することが出来る愚か者であり続けたい。

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旅には莫大な費用がかかるため、ぜひご支援ください!

この記事を書いた人

外村康一郎 トノムラコウイチロウ
生物探検家。雑誌「季刊奇蟲」編集長。世界中で奇妙な蟲の撮影を行い、各メディアへの写真提供、執筆を行う。日本土壌動物学会所属。
協力にNHKサイエンスZERO「“やんばる”世界遺産へ 奇跡の森になったワケ」
ダーウィンが来た!「お正月特集 龍のナゾを大研究!」など

論文執筆にEdaphologia No.110
渡嘉敷島(慶良間諸島)からの半水棲オオムカデ,リュウジンオオムカデScolopendra alcyona (Scolopendromorpha, Scolopendridae)の初記録など。
1994年12月28日兵庫県加古郡出身。

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