山地

ボルネオ キナバル奇蟲紀行 季刊奇蟲Free

キナバルの頂は遥か遠く、まさに雲の上の存在。
筆者は2015年以来、実に8年ぶりにボルネオ島キナバルへと訪れた。

当時の筆者は奇蟲の観察をしたことがなく、夜間にヘッドライトが必要という初歩的なことすらわからず、iPhone5の灯りで熱帯雨林を歩いたものだった。

そんなことを懐かしみながら、キナバル山を徘徊しているとサンヨウベニボタルが現れた。

この生物はメスが幼虫の姿に近いまま性成熟する(幼形成熟)変わった昆虫である。
さらには粘菌を捕食するなど、見た目以上に生態も一風変わっている。
オスがなかなか見つからないということもあり現代においても神秘に包まれている不思議な虫だ。

深夜になると紺鼠色のマダラゴキブリが多数現れた。
日本のマダラゴキブリは褐色だが、風合いが異な、これまた美しい。
幼虫は地面におり、日本のマダラゴキブリとよく似た色をしていた。

キナバルコノハガエル Pelobatrachus baluensis の幼体。この日の夜間気温は16℃と肌寒かった。しかしカエルはよく出ているものだ。

葉の上にはPhilautus nephophilus の姿も見られた。
ハイライト部分によってくびれているように見える。

カエルを眺めていると枝をスルスルと登っていくミミズを発見した。
西表島でも樹上性と思しきミミズを観察したことがあるが、奇妙な気持ちになる。
熱帯雨林は雨が多く、土壌が流れてしまうため、このような生存戦略が残ったのだろうか。

地面には美しいコウガイビルの姿もあった。 大量の粘液を分泌しながら移動しており、通った跡はぬらぬらと輝いていた。摂食行動の観察例は少ないそうだが、筆者は高尾山でミミズを捕食する様子を見たことがある。

黄緑色のコウラナメクジは多数観察することが出来た。
目がなんとも言えない愛らしさである。

日本のアカザトウムシを大型化したかのようなザトウムシを発見した。
甲冑のようなゴツゴツとした腹部や金属光沢を帯びた機械のような触肢。素晴らしいの一言である。

登っても登っても山頂が見え続ける凄まじい山である。

同じ場所でも全く違う景色が見える素晴らしい旅となった。



季刊奇蟲について

季刊奇蟲では、このような記事を各分野の研究者、専門家に寄稿頂いております。より本格的で奥深い世界を楽しみたい方は是非、季刊奇蟲本誌もお買い求めください。